2024年7月7日(日)

▼知事が好きであろうが嫌いであろうが、事あれば有識者会議は設定されるものなのだろう。それが、役所の手続きであり、責任を分散させる知恵というものかもしれない。虐待防止条例改正へ向けて、また有識者会議である

▼「条例には良いことが書かれているが」と委員が言ったそうである。それはそうだろう。現状を調査し、よいことばかりで網羅され、とにかく漏れをなくすことが、こうした場合の行政の仕事の進め方だ。先の委員が続けた。「実践(が)できていない」

▼座長の佐々木光明・神戸学院大法学部教授も言っている。「単純な理念条例ではなく、政策の指針となるような具体的な条例としたい」。現行条例は「単純な理念条例」であり、具体的に実践するには役に立たないということでもあろう

▼別の委員はこうも言う。「児童相談所の職員に高度な能力を求めるのではなく、当たり前のことを実践することが大事」。職員の能力不足が指摘されてきたが、そういう問題ではないというのである。世間的に当たり前のことをする。思えば、職員にとって最も苦手とするところかもしれない

▼現行条例の課題として「母親を支援する視点に欠ける」という指摘もあった。産後うつや障害児を持つ親への支援が必要というのだ。もっともだが、改正のきっかけとなったのは四歳女児の暴行死。報酬や働き方の男女格差の視点も外せまい

▼平成16年の条例制定以来の改正という。同22年に三件続けて発生した虐待死・重篤事件にも手つかずだったことにあらためて驚く。