子どもを虐待から守る条例の改正を検討する三重県の有識者会議は5日、県人権センター(津市一身田大古曽)で初会合を開いた。関係機関による情報共有の強化や、虐待リスクがある親への特別な支援に向けた記述を求める声が上がった。
条例改正は、津市で母親から虐待を受けた女児=当時(4つ)=が死亡した事件を受け、一見勝之知事が4月に表明。県は委員らの議論を踏まえ、来年6月にも条例改正案を県議会に提出する。
県によると、有識者会議は子どもの権利などに詳しい学識経験者や弁護士、虐待の防止に向けて取り組む団体の代表ら8人で構成。座長には、神戸学院大法学部の佐々木光明教授を選んだ。
この日の会議では、委員らが現行条例の課題などを指摘。「母親を支援する視点に欠ける」との観点から、産後うつや障害児を持つ親への特別な支援を盛り込むよう求める意見が上がった。
関係機関でつくる要保護児童対策地域協議会の運営について、定期的な見直しを義務付けるよう求める声も。条例が定める「秘密の保持」に臆せず、積極的な情報共有を促す声もあった。
また、現行条例は虐待に関する相談への対応を県に義務付けているが、委員の1人は「危険な場所にいて声を上げることができず、窓口にたどり着けない子どももいる」などと指摘した。
一方で「条例には良いことが書かれているが、実践できていない」と指摘する委員も。「児童相談所の職員に高度な能力を求めるのではなく、当たり前のことを実践することが大事」と訴えた。
佐々木座長は冒頭のあいさつで「単純な理念条例ではなく、政策の指針となるような具体的な条例としたい。それぞれの委員に専門の立場から意見を出してもらいたい」と述べた。
子どもを虐待から守る条例は平成16年3月、都道府県として初めて制定。体罰の禁止や県の責務、通告の義務などを明記しつつ、子どもの安全確認などに関する具体的な記述はない。