伊勢新聞

2024年7月5日(金)

▼サッカーJFL鈴鹿に戻ってきた「カズ」こと三浦知良選手の初練習をテレビで見た。カメラが同選手に合わせているせいか。他の選手に比べて動きは敏捷で、最高齢得点更新など時間の問題に思えたが、素人のたわ言で何らオーソリティーを主張するものではない

▼「ベテランらしくなく、ガツガツ行きたい」というコメントに感銘したのもほんのついでというものである。57歳でサッカーの現役を続けていけるのはむろん、入念な練習と体のケアを怠らないことが最低限の条件だろうが、その上でスポーツはもちろん、どんな競技でも仕事でも、実績を積み上げてくると、ベテランとしての強みを発揮しようとする向きは多い

▼我が業界でも、幹部らとの懇親会でたまに若い頃の“武勇伝”を聞かされる。それはそれで傾聴に値するのだが、もう一度やれるかと聞くと「嫌だな」「できない」という。追い込まれた状況、切羽詰まってしゃにむに突き進んだ頃を思い出すのだ。若い向こう見ずな記者に昔の自分を重ね合わせ、上から目線で助言や訓戒はできても競い合う気はさらさらない

▼将棋の米長邦雄永世棋聖(故人)は4冠達成後の後半、自分の強みは豊富な経験だとして若手と対戦していたが、成長を続けなければ遅れていくだけという羽生善治九段に触発されて若手の将棋を学び直して史上最年長名人になれたと語っていた。羽生九段は53歳。将棋連盟会長ながら昨年はタイトル戦挑戦者になった

▼ともに「ガツガツ行きたい」。成長し続けるぞということだろう。