伊勢新聞

2024年7月2日(火)

▼紀宝町の特別養護老人ホーム「宝寿園」の金庫から、入所者7人の現金計約10万円を盗んだとして、施設に勤める30代の男性介護職員が懲戒免職処分となった

▼入所者からの預かり金を補完する金庫から7人分がなくなっていた。本人は盗んだことを認め、弁済の意思を示しているという。施設は、熊野、御浜、紀宝の3市町で組織する紀南特別養護老人ホーム組合の運営。いわば公的組織の職員が、少額に属するカネをなぜ盗まなければならなかったか。職員倫理や待遇など、現代の福祉施設が抱える問題があるのかもしれない

▼津市が、現在指定管理者制度で運営している身体、知的、精神の障害者を対象にした市の六つの障害福祉サービス事業所を、指定管理者の市社会福祉事業団の運営に移行し、民営化する

▼より質の高いサービスが可能というのが市のうたい文句。サービス内容の低下がないのは同事業団が津市の全額出資だからうなずける。変わるのは、市の財政面だろう

▼6施設の一つ、コスモス作業所は築50年で立て替えを迫られていた。民間だと国などから4分の3が補助されるが、市では対象外。報酬面も、自治体は民間に比べて3・5%減。事業団は乳児院と児童養護施設を自ら新築し平成30年度から自主運営を始めたが、これを機に市からの交付金年間約5千万円も廃止した

▼よく話題になる政府の埋蔵金がちらりと姿を見せた思いがする。直営施設の民間売却は、一般競争入札が原則。複数の事業者から関心が寄せられたが、応札者は事業団だけだった。