▼共同通信社の最新の全国電話世論調査は、岸田文雄首相にいつまで続けてほしいか聞いている。「再選し、続けてほしい」が10・4%。「できるだけ早く辞めてほしい」が36・6%。内閣支持率は22・2%で、前回調査(5月)から2・0ポイント下回った。全国紙世論調査には10%台で下がり続けているのもある
▼人気が上がらないのには具体的理由がある。改正政治資金規正法に納得できず、物価高対策の有効性に否定的だからだが、首相は一向にめげないようだ。9月の自民党総裁選に意欲を示し、党員の支持獲得をにらんだ地方行脚を実質的にスタートさせた。政権交代の危機感も、物価高にあえぐ国民の苦しみもどこ吹く風の鈍感ぶりが際立つ
▼地方行脚の第一歩が山梨県というのもそうだ。令和3年の前回総裁選で党員・党友による地方票がトップだったのは8県で、その一つが山梨。まず足場を固める思惑があるらしい。能登半島ではないことに、政治家としての鈍感さがうかがえないか
▼首相は、記者団に「地方から厳しい声が上がっていることを厳粛に受け止め、現場の声を丁寧に聴く姿勢を大事にしていく」。厳粛の中身が不明だし「聴く姿勢」がほとんど空手形に終わっていることも、首相は気にしていないようだ。首相の思いはともかく、対策はいつも小出しで、引っ込めてはまた小出しにすることを繰り返す
▼旧統一教会では安倍元首相の調査を、政治資金パーティーの裏金問題では二階俊博元党幹事長の聴取を見送った。“巨悪は眠らせる”ようにも映るのである。