伊勢新聞

2024年6月30日(日)

▼「介護生産性向上」と聞くと時節柄、お隣愛知県で発生した障害者グループホーム大手の補助金不正請求や、食材費の過大徴収を連想してしまう。職員を水増ししたり、食材費として徴収した3分の1ほどで食事を提供して利益をあげていた

▼「介護」と「生産性向上」という福祉の言葉と経済用語を結びつけた安易さが今風か。「生産性向上」となると、半世紀以上の実績を持つ企業に考え方や手法において、福祉関係者がかなうはずがないからだ。問題を起こした障害者グループホームの運営会社も、もっとも効率よく利益を上げられる分野として参入してきた営利法人で、実際10年ほどで飛躍的に成長。全国に100の施設を持つに至った

▼県が来月1日から、介護現場の業務改善に向けた相談を受ける「みえ介護生産性向上支援センター」を開設するという。介護福祉士が、利用者との対話方法▽業務の課題▽人材不足―などの相談に応じ、ICT(情報通信技術)機器や介護ロボットの試用品も貸し出す

▼効率化や負担軽減など、現代人がすっかり耳に慣れ親しんだワードがちりばめられ、いいことづくめに聞こえるのが、県の新規事業の特徴でもある。機器導入が、円滑な運転技術やその後のメンテナンスを含め、過大な負担にあえぐきっかけとなる例も少なくない

▼「介護の業務が効率化すれば、人材確保や定職化にもつながる」と県医療保健部の担当者。担当が福祉部門ではなく、医療保健部であることが最大の不安要因でもある。