伊勢新聞

2024年6月27日(木)

▼国土交通省のDNAか、県のDNAか。全国知事会地方創生・日本創造本部のオンライン会合での一見勝之知事の提案にそんな思いを抱かせる。人口減対策の司令塔組織を国に求めるのと抱き合わせた企業の本社機能の地方移転に、かつて急速に盛り上がり、しぼんでいった首都機能移転を連想させるのだ

▼官僚出身評論家らが提唱した首都機能移転が国策となり、国会決議を経て県を含む全国3カ所の候補地を決めるに至ったのは阪神淡路大震災に直面して東京一極集中の是正が急務に思えたからだ。「また夢みたいなことを言い出したと当初思っていた」と当時県職員は言った。「国会決議までするとこれは本気かな、と」

▼県が真剣に取り組みだし、東京・地下鉄の車両をラップでくるんで「三重・畿央地区へ」と都民にアピールした。国の事務局は国土交通省に置かれ、首都機能移転企画課が新設されたが、国会決議に賛成した石原慎太郎が平成11年の都知事選に出馬し、移転論に「絶対反対」を公約に掲げて一転、凍結へ。国交省の担当課も廃止になった

▼本社機能移転はもともと地方の主張でもある。企業の税金は本社機能のある自治体に一括納入される仕組み。地方で成長した企業でも本社の大都市移転後は、地方は収奪されるだけの存在になる。ふるさと納税論がでてくる一因だ

▼全国知事会の会合では東京都が「人口移転を国が促進すべきではない」と東京一極集中の是正の削除を要請した。対立の構図再び―東京都と折り合いをつけるかが課題でもある。