初の伊勢産ワイン「雅」完成 市内でブドウ栽培、醸造 三重

【完成した伊勢産ワインを鈴木市長(右から2人目)に届けた岩崎社長(右端)と利用者ら=伊勢市役所で】

【伊勢】三重県伊勢市の農場で栽培したブドウを原料に、市内のワイナリーで醸造した同市初の伊勢産ワイン「伊勢 雅」がこのほど完成した。障害者の就労支援施設「ジョブスタジオ伊勢」の利用者らがブドウの栽培から携わり、小規模なワインづくりが可能な「ワイン特区」の制度を活用してできた「純伊勢産」ロゼワイン。施設を運営するケアプロフェッショナルの岩崎直明社長(44)は「ほどよい酸味と芳醇(ほうじゅん)な香りのワインに仕上がった。生産量を増やし、伊勢の新しい魅力にしていきたい」と語る。

「雅」は、同市御薗町の農場で栽培した酸味が強いワイン専用品種サペラヴィを100%使用。栽培には、真珠養殖のアコヤガイの貝殻などを活用した肥料を使い土作りからこだわった。昨秋、施設利用者らが手作業でブドウを収穫し、自社のワイナリーで醸造。熟成を経て完成した。市内で栽培から醸造まで手がけたワインは初となる。夏には、スパークリングワインが、秋には赤ワインも完成予定だ。

【市内でブドウ栽培から醸造まで手がけた伊勢産ワイン「伊勢 雅」。手前はワインとブルーベリーを使った「伊勢ワインジャム」】

ワイン製造は、「障害のある人が、地域で生き生き働くことができる場所をつくりたい」という岩崎社長の思いから始まった。現在、ワイン造りに20―30代の利用者11人が携わり、ブドウ栽培やワインの仕込み作業の一部を担っている。

岩崎社長らは平成29年、地元農家から農地を借りて、ブドウの試験栽培を開始。試行錯誤しながら栽培規模を広げ、専門の醸造家に醸造技術を学んで醸造会社「伊勢ワイン」を立ち上げるなど準備してきた。市は、小規模な事業者がワイン事業に参入しやすくなる「ワイン特区」を国に申請して取り組みをサポート。昨年、特区の認定を受けたことで醸造免許を取得することができ、念願の純伊勢産ワインの生産を開始した。

岩崎社長と利用者らがこのほど、市役所を訪問し、鈴木健一市長に初物のワインを持参して報告した。岩崎社長は「伊勢を訪れる観光客に味わってもらいたい。今後増産し、障害者の所得の向上と、やりがいの創出につなげたい」と話した。

「伊勢 雅」(375ミリリットル)は7月以降、数量限定で、同社のワイナリーや自社サイト、三重テラス(東京都)で販売を始める。価格は未定。市のふるさと納税の返礼品にもなる。