伊勢新聞

寛政の大津波の教訓伝える 「見るな、待つな、おごるな」 伊勢・龍宮社で神事「郷中施」

【供え物のキュウリやミルなどを載せた木船を浜辺に運ぶ舞女たち=伊勢市二見町で】

【伊勢】三重県伊勢市二見町江の二見興玉神社境内にある龍宮社で20日、江戸時代に起きた大津波の犠牲者を供養し、地域の安全を祈願する神事「郷中施(ごじゅうせ)」があった。

江地区は1792(寛政4)年、大津波に見舞われた。一帯は大きな被害を受けたが、住民たちは助け合い、村中(郷中)で施し合って復興したと伝わる。郷中施の神事は、その言い伝えに由来し、先人の教訓を後世につなぐため、毎年、津波のあった旧暦の5月15日に開かれている。

神事には、氏子や地域関係者らが参列。祭典の後、神職らが供え物のキュウリや海藻のミル、マツナ、ナスなどを木船に載せて神社前の浜辺に運び、海へ流した。供え物には、「津波が急にきたら見るな、待つな、おごるな」という先人の教えが込められている。

金子清郎宮司は「近年、地震や自然災害が多発している。神事を通じ、災害に対する心構えと、有事の際の助け合いの気持ちを改めて思い直してほしい」と話していた。