歴史小説「雲出川」を自費出版 元社会科教諭、津の伊東さん、2冊目 三重

【2作目となる著書「雲出川」を紹介する伊東さん=津市内で】

【津】元三重県立高社会科教諭の伊東文子さん(64)=津市野田=が、2冊目となる歴史小説「雲出川」を300部自費出版した。「学校では教わらない郷土の歴史を若い方にも知ってほしい」と話す。

伊東さんは一昨年に歴史小説「北畠の落日」を出版。2冊目を期待する声に応え、雲出川流域に残る古代、中世、近世それぞれの伝承や史実を基に昨秋から執筆を始め、3編の短編集に仕上げた。

5世紀を舞台にした「蒋代野(こもしろの)」では隼別皇子(はやぶさわけのみこ)と雌鳥皇女(めとりのひめみこ)の悲恋について「古事記」と「日本書紀」で2人の処刑場所が違う点を、南北朝時代の物語「雲出川の戦い」では南朝方の勝ちと負けどちらの史料もある矛盾をそれぞれ追求し物語にした。

「雲出井(くもずゆ)」では江戸時代雲出川から全長約13キロメートルにわたる農業用水路を整備した藤堂藩士、西嶋八兵衛を、働き者で人情味ある人物として描いた。現在の雲出井周辺の地図は夫の規雄さん(70)が製作した。

伊東さんは全編を通じ「登場人物の会話を多くするよう心がけた」と振り返り「雲出川がある地域の方に読んでいただきふるさとを誇りに思ってほしい」と話した。

A5判124ページで1冊税込1000円。宮脇書店久居インター店で購入できる。