2024年6月17日(月)

▼犬が人をかんでもニュースにならないが、人が犬をかんだらニュースになる―というのは、野良犬が多く、放し飼いも珍しくなかった時代の、いわば古典的なニュースの基準。今は違っていようが、ともあれ、珍しいことがニュースの一方の雄を占めていることは変わりあるまい

▼本紙16日付1面トップは、百貨店の父の日イベントだった。3歳の幼児が館内放送で、父親への感謝の気持ちを伝えた。「お仕事頑張ってくれてありがとう、いっぱいだっこしてくれてありがとう、いろんな公園に連れて行ってくれてありがとう」。そして「お父さん大好き」で締めくくった

▼毎年記念日に実施する人気の催しという。初めて知ったのは恐縮だが、1面トップに躍り出たのは珍しいことだからか、スケジュール報道だったか。父の日が記念日になったのは母の日の先行があったからだが、母の日に比べ父の日が埋没気味なのは今も変わらない

▼歌手の武田鉄矢さんが「母に捧げるバラード」でスターダムにのし上がったのは知られるが、母が注目されることで父親が不満で、慰めるために「おやじ」という曲をつくった。「母」が100万枚近く売れたのに「おやじ」は4万枚。「日本人には母が売れるんですね」と話していた

▼「だっこ」や「公園」など父親像も一昔前から大きく変わった。父の背中などは急病の折に体験しただけの世代には目を見張る思いだが、県の男性の育休取得率も下降気味という。社会全体が男女共同参画になるには父の日ももう少し話題にならなければなるまい。