伊勢新聞

2024年6月14日(金)

▼そういえば、このところ障害者団体などから三重県の障害者差別に対する抗議が見かけなくなった。解消したわけではないことは、かつて県直営施設だった県外郭団体運営の精神障害児(者)施設で昨年暮れまで虐待事件が絶えなかったことでも分かる。主に精神障害者の働く場所づくりを目的に県総合文化センターに設けた障害者カフェが「役割を終えた」として、12月末で閉店するという

▼どんな「役割を終えた」のか、県の担当部長の答弁は「障害者が働けるカフェが県内31カ所に増え」。要は、数の問題か。障害者、特に精神障害者の離職率が高いことが問題になっているが、何らかの解決策を見いだしたか

▼ステップアップカフェは「県が経済・労働団体など多様な分野の関係機関と一緒に進める障がい者雇用の推進に向けた取組の名称」と県は解説するが、開店時はそれほど明確ではない。障害児の将来を心配する親の不安を解消することが第一とされ、障害者を労働力と考えるのかという報道陣の問いを否定した

▼その後の推移で解説のような趣旨に構築されたのだろうが、障害者と健常者が「身近で当たり前に働くことができる社会に繋(つな)げていく」目標が日暮れて道遠しであることは言うまでもない。県教委を中心に障害者の水増し雇用が問題になったが、その解消に迫られて健常者同様の働きができる障害者の採用が急がれ、障害種別によって除外される状況は変わらない

▼障害者カフェ運営10年で県は何を学んだか。どんな役割を終えたか。まとめてみてはどうか。