伊勢新聞

2024年6月8日(土)

▼かつて世界を席巻した「日の丸半導体」は復活できるのか? 経済安全保障の面から、政府の大型支援が注目されている。熊本県菊陽町に誘致した台湾TSMCに1兆2千億円、北海道千歳市のラピダスに9200億円、本県四日市のキオクシアに2429億円など、半導体産業に総額約4兆円もの公的資金が投入される

▼しかし、米中韓それぞれの投資額と比べると少ないうえ、ほぼ新工場の建設、現工場の増強などの後工程に使われる。最大の弱点であるファブレスIC設計の育成・強化には回らない。「これでは日本は下請けのままではないか」という批判がある

▼生成AI(人工知能)の発展で、世界は超高品質で超微細化されたロジック半導体の開発競争に突入した。が、この技術は日本にはない。画像処理半導体のGPUは米エヌビディアの独壇場。ラピダスは2ナノを目指すとしているが、その技術は米IBMの支援を仰いでいる

▼日本が得意としているのは装置産業、素材産業。「メモリー半導体、車載半導体をいくら生産しても世界をリードできない」と見る専門家は多い。経済安全保障はかけ声倒れに終わるのだろうか。