伊勢新聞

2024年6月5日(水)

▼5月病の季節が終わったと思ったら、最近は6月病がより深刻だという。慌ただしかった4月からの新生活が一段落して長期休暇を経て、何か気分がすぐれずやる気が起きないのが5月病なら、それにストレスが加わったのが6月病で7月病、8月病というのも続いてくる。自然治癒も多いが、放置すればどんどん重くなって引きこもりに進むらしい

▼似たような心理状態は昔から指摘されていた。ギリシア語に由来するメランコリーは「憂うつ」と訳され、すっきりしない落ち込んだ気分として抑うつ状態とされるが、中身は時代とともに微妙に変わる

▼大正12年発表の抒情歌『花嫁人形』はきらびやかな衣装をまとった花嫁の涙をつづる。昭和30年の島倉千代子のデビュー曲『この世の花』も「思う人には嫁がれず、思わぬ人の言うまま気まま」と泣く。恋愛と結婚は別とされた時代の心情を歌ったが、昭和末期の知人は結婚式1週間前に式場も婚約も破棄した。これでいいのかという漠然とした不安からだという。そんなケースは少なからず聞いた

▼5月病も6月病も医学用語ではない。病名では「適応障害」とされるが、この病名自体、そう古くない。三重大の精神医学の教授が、発達障害などとともに細分化しすぎると話していた。定年退職症候群、夫婦病なども、いまのところ「適応障害」の範ちゅう。ストレスが心身に与える影響は年々複雑、増えているということだろう

▼新入社員の離職が問題になっている。将来への見切りの良さか、ストレスかは見極めが難しい。