伊勢新聞

<まる見えリポート>三重県交通安全協会 加入率30%に低下、深刻

【県交通安全協会が更新業務を受託する運転免許センター=津市垂水で】

 
運転免許の更新時に求められる三重県交通安全協会(津市高茶屋4丁目)への加入。任意だが、断ると「拒否されるんですね」と強い口調で言われたとの訴えが本紙に寄せられた。加入すると言っていないのに、会費を免許の更新手数料に上乗せして提示されたという。かつて全国的に見直された加入の勧誘を巡る問題が再び浮上した形だろうか。背景には、加入率の低下によって協会の財政が逼迫(ひっぱく)しているとの実情も見て取れる。交通事故の根絶に向けた協会の取り組みに理解を得られるかが課題となりそうだ。

「正直に言うと、怖かった。すごく悪いことをしたように感じた」。津市の男性会社員(25)は、更新手数料の支払いで交通安全協会の職員とやりとりをした際のことを、そう振り返る。

男性は3月、県運転免許センター(津市垂水)の収入証紙販売窓口を訪れた際、協会の女性職員に会費の支払いを求められた。「すみません。今回は大丈夫です」と丁重に断ったという。

すると、女性職員は目を丸くして「拒否されるんですね」と強い口調で返答。男性が「申し訳ない」と再び陳謝すると、職員は更新手数料分の収入証紙代だけを男性に請求したという。

会費は年間500円。免許証の有効期間が5年なら2500円、3年なら1500円が請求される。新1年生に贈るランドセルカバーやボランティアに配る備品の購入などに充てられるという。

加入は任意。協会の活動に協力しようと思えば加入すれば良いし、そうでなければ断れば良い。「会員なら交通違反を大目に見てもらえる」という話も「都市伝説」(県警幹部)だ。

もちろん、今回のような対応ばかりではないだろう。1月に免許を更新した50代女性は「会費の使い道が良く分からなかったので加入しなかった」としつつ「対応は丁寧だった」と振り返る。

ただ、男性はこうも指摘した。「入会は任意のはずなのに、なぜ会費を含めた合計金額を先に提示するのか。あれなら任意だとは知らずに支払っている人も少なくないはず」

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協会によると、収入証紙の販売窓口では、協会への加入が任意だと明確に伝えるよう徹底しているという。一方、協会の幹部は「多くの人に加入してもらえるよう求めている」とも語る。

また、協会の本年度事業報告書には「年間加入目標件数を設定し、窓口の職員に会員加入促進対策を動機づける」との記述が。加入者を増やそうと奮起している内情が垣間見える。

背景にあるのは協会の財政難。近年では数千万円規模の「赤字決算」が目立つようになったとされる。令和4年度の報告書でも、正味財産の期末残高が前年度比約1200万円減となった。

理由の一つは加入率の低下。平成24年時点で40・5%だった加入率は低下の一途をたどり、令和5年には30・7%に落ち込んだ。会費に換算すると、年間で数千万円規模の減少となる。

このため、協会は大規模な経費削減を敢行。県庁付近にあった事務所を引き払ったほか、人員整理もした。ただ、人口減で免許更新者が減っていることもあり、先行きは見通せないという。

一方、協会は長年にわたって交通安全の啓発に努めてきた。登下校を見守るボランティアを支援したり、小学校で交通ルールを教えたり。運転の注意点などを紹介する動画の配信も始めた。

協会幹部は加入率が低下する背景に協会の活動が知られていないことを上げつつ、その打開策に悩む。「収入証紙の窓口だけでは協会の活動を紹介できない。日頃から地道にアピールしたい」