伊勢新聞

2024年5月23日(木)

▼このところ「25億円賞金に当選しました、おめでとうございます」というメールが携帯電話に届く、と書いたのは大型連休前だった。亀山市内の50代男性が暗号資産への投資話で約3千万円をだまし取られたというニュースを見たからである

▼オレオレ詐欺に始まった特殊詐欺は架空料金請求詐欺などに形を変えて、最近はもっぱら還付金詐欺、投資詐欺である。オレオレ詐欺が核家族になって孤独なお年寄りの心の隙間を突いた詐欺とするなら、還付金、投資詐欺は「お得ですよ」「もうかりますよ」とささやく。矢継ぎ早に高齢者の社会保障負担が上がり、やはり将来への不安を突いてくる

▼ちょっとした立ち回りの要領の良さで得をしている人がいる、うまい話にありついてもうけているやつらがいる―と宣伝し、急がなければバスに乗り遅れるという国民性をあおる社会が背景にある

▼25億円賞金当選話は、まだ間に合うなどの関連メールとセットで、全額当選したわけでなく、15億円から千円まで各賞あり、あなたが当選したのはどのランクか早めに確かめて、というのが芸の細かいところだ

▼くれぐれもだまされないようにと書いたが、津南署によると、その4日後、津市の80代女性が「10億円当選」のメールを受け、299万円をだまし取られたという。無力を感じるのはこんな時だが、剣より強いはずのペンも、国と経済界が一体となった土壌づくりには蟷螂の斧に過ぎないということでもあろう

▼めげずにくれぐれもご用心をと呼びかけるしかない。