伊勢新聞

2024年5月21日(火)

▼救急車出動上の問題点といえば、かつては医療機関の「たらい回し」、利用者の「タクシー代わり」。現場到着時間が長く「動き出さない救急車」とやゆされたりもした

▼その都度、行政は解消に工夫し、最近では鈴鹿市がマイナンバーカードを活用して病状の早期把握に役立て、津市は新たな救急隊を組織し、救急車の負担軽減を図った。松阪市は6月1日から、救急搬送されながら入院に至らなかった軽症患者から「選定療養費」名目で1件につき7700円(税込み)を徴収する

▼先日友人が外出中に体調を崩し、道ばたで休んで帰宅したが、家人、知人に「なぜ、すぐに救急車を呼ばなかった」と大いに叱られたそうだが、松阪市だったら、おちおち救急車も呼べない

▼学生時代、腹痛で倒れ、救急搬送されたことがある。急性盲腸炎ですぐ手術だったが、救急車到着を知らされた時はすぐ起き上がり、歩き出して周囲をあわてさせた。1万円近く取られるなら断ったかも知れない

▼松阪地区は救急車出動回数が全国的に飛び抜けて多いそうだが、料金徴収で大いに減るに違いない。負担を嫌って医者にかかりたがらない低所得者は多いというが、促進されよう

▼伊勢赤十字病院も軽症者に救急車利用以外の選択を促しているそうだが、特別料金を徴収しているわけではない。伊勢市と連携して、かかりつけ病院の設定を呼びかけ、二次医療と三次医療の分担を明確にして成果をあげた。松阪市の場合はまず金か。万策尽きての苦渋の選択か。