伊勢新聞

2024年5月19日(日)

▼三重県警の30代巡査部長が商業施設の駐車場で隣の車に傷を付け、そのまま報告もせずに現場を立ち去ったとして、道交法違反(報告義務)の疑いで書類送検され、本部長注意を受けた。「認識の甘さと恐怖心から逃げた」と供述しているという

▼恐怖心から逃げるのは交通事故を起こした当事者なら誰もが陥る心理だろう。誰も見ていないと分かると実行に移す人も少なくない。警察官も人の子ということだが、認識の甘さとはどういうことか。この程度なら届けるまでもあるまいと自分に言い聞かせたか

▼警察発表が身内の不祥事になると分かりにくいのは珍しくないが、今回も例外ではなさそう。「同乗者がいない」というのは公用車を私的に使っていたということか。所属も部署も明らかにしないのは軽微な犯罪だから警察官だからといって特別に扱わなくてもいいということだろうが、本紙は同一紙面の隣に同じ四日市市内での自転車一斉取り締まりについて掲載し「自転車でも交通違反は絶対ダメ」と書いたビラを高校生らに配ったという。いささかばつが悪くはないか

▼「組織に多大な迷惑をかけ、反省している」という決まり文句もいただけない。迷惑をかけたのは、まずは傷をつけられた相手側である気がする。悪質な当て逃げが絶えない中で、取り締まる側から出したことの組織としての反省はないのかという気もする

▼要は「全職員に対して、法令順守や交通事故防止を徹底し、再発防止に努める」という県警コメントが、何だか人ごとのように感じられるのである。