伊勢新聞

2024年5月14日(火)

▼連休中開催された県無形民俗文化財、多度大社(桑名市)の上げ馬神事について、一見勝之知事は定例記者会見で「無事に開催できて良かったと思っている」。何はともあれ、ホッとしたという思いがにじむ

▼県文化財保護審議会の建議を経て教育長が勧告し、祭りを仕切る総代会が専門家の意見も聞き、大幅に改革して実施した。これで何かあったら面目にかかわろうが、一方で「飲酒やむちの使用について改善すべき事があるのではと聞いている」とも。先が思いやられる気がしなくもない

▼むちは、竹から柔らかい素材に変えられ、合図にだけ使うことになったはず。飲酒は、馬を興奮させるために用いられていて、動物愛護とは相容れない。「来年度も見直される点があるのだろうと思う」という知事コメントは、改善案が必ずしも守られていなかったということか

▼700年続くという伝統行事である。改革が大幅になればなるほど反発が出てくるのは当然ではあろう。神事は氏子らの総代会が主催し、文化財保持は多度大社が担う“二重構造”だ。文化財保護審議会は実施主体の明確化を求めたが、総代会主催を変えなかったのもその一つだろう。専門家らも加えた「在り方検討会」では土塁完全撤廃、むちの扱いなどに異論があった

▼武者姿の若者を乗せた6頭の馬全てが坂道を駆け上がるのに成功。成否で農作物の吉凶を占うという神事の今後はどうなるか。競走馬の足は繊細で、折れやすいともいわれる

▼知事とは別の意味で、来年度以降も、見直しは進めねばなるまい。