伊勢新聞

2024年5月10日(金)

▼総会屋が横行し、企業の株主総会担当がいかに短い時間で終わらせるかを競っていた時代の昭和59年、ソニーが深夜に及ぶ13時間半の長時間をかけたことが話題になった。ねぎらいの言葉に、議長を務めた大賀典雄社長は「これが私の仕事」と淡々と語った

▼大変だったのではないか、という質問に「仮に自分が大変だったとか、もう少し手際よくなどと言ったり、顔に出したら、部下はすぐ読み取ってそうするように動く。そうなるとまた、総会屋との癒着などという問題も出てくる」という趣旨の返答をした

▼熊本県水俣市で1日に行われた水俣病の患者・被害者団体と伊藤信太郎環境相との懇談で、「1団体3分」と決められた持ち時間をオーバーしたとして、環境省側が少なくとも2団体代表の発言途中にマイクの音を切り、団体側から抗議を受けて、伊藤環境相が現地に出向き直接謝罪した

▼奇妙な流れだった。伊藤環境相は報告を受けるとただちに謝罪の意向を示した。林芳正官房長官も7日の記者会見で「(団体側に)不快な気持ちにさせてしまったことは適切な対応ではない」と語った。岸田文雄首相も「貴重な機会における環境省の対応は不適切」

▼司会をした同省の特殊疾病対策室長はその場で「不手際だった」と釈明を繰り返した。が、持ち時間ルールは以前からあり、マイクを切る運用も。いずれも、今回初めて決めたルールではない

▼事務局職員は上層部の意向を読み誤ったか。実際にマイクを切ってみて、その反響の大きさに上層部が慌てふためいたのか。可能性は、どちらも小さくはない。