伊勢新聞

2024年5月8日(水)

▼昨日のこの欄で春の大学野球三重大会で優勝した皇學館大学のチームテーマ「泥臭い野球」に触れてその戦いぶりを紹介しながら、かつて万年最下位だったプロ野球大洋ホエールズを監督就任1年目で優勝させた三原野球を頭の隅に思い浮かべていた

▼一塁に走者がでれば二塁、三塁へと送りバンド。三塁走者がいれば、まずスクイズ。基本に忠実ということだろう。三原マジックと喝采を浴びたが、のちにさらに徹底して巨人軍9連覇を達成した川上哲治監督の場合は、面白みがないと人気はいまひとつだった

▼三原脩監督は、幼かった自分にチームは監督の力で強くも弱くもなることを鮮烈に教えてくれた。巨人を追われるように西鉄ライオンズに行き、その巨人相手の日本シリーズで3連勝した。3連敗4連勝の離れ業をもやった

▼こちらは春季高校野球三重大会。昴学園が創部以来初めて県大会で勝利し、勢いをかって強豪校を連覇。やはり創部以来初めての3位となった。率いたのは東拓司監督。平成30年夏の大会で無名の白山高校を初の甲子園出場に導き「下克上」と話題をまいた

▼その後目立つような活躍もなかったので“まぐれ”はそう続かないと不遜なことを考えていたが、どっこい昨年昴学園に異動し、夏の大会1勝を挙げていたという。限られた時間で効率的な練習という信念を今度も実践しているのだろう

▼むろん教え子らに信頼がなければできることではなかろう。教育の見本を見せられる心地がする。本紙は、「『下克上』第二章へ」と、提灯(ちょうちん)をつける。