伊勢新聞

2024年5月1日(水)

▼「県警としては、停職が『厳正』な処分だったのだろう」と本紙企画「まるみえリポート」は締めくくった。盗撮、わいせつなど、警官の不適切事案を告発したリポートだ。へえー、これが「厳正」かねえ、といったニュアンスを感じる

▼盗撮警察官の常軌を逸した行動には改めて驚かされる。愛知、三重両県警に逮捕された2件のほかに両県で女性のスカート内を盗撮したのが19件、ほかに民家から女性の下着を盗み、同僚への痴漢行為もして、23件立件された

▼警察以外の組織なら免職ものだが、停職6月の処分。組織内から「甘いといわれても仕方ない」「県民に説明できない」の声が出るのは特別なことではない。旧大蔵省の官官接待を糾弾した中坊公平弁護士は「ミカン箱」論を展開した

▼腐ったミカンが1個出たらすぐ取り除かなければ全部腐ってしまうというのだ。ミカンはカビなどが原因だろうが、人間の場合は色が変わった“ミカン”をみんなが見ている。何のおとがめがないのを確認すると、自分もそこまで変わる。やがてもう少し濃いのが現れて、繰り返されていく

▼昨年1年間の県警の懲戒処分1人、監督上の措置8人に対し、今年はそれぞれ4人、9人。甘い対応が組織を“腐らせた”ことを物語る。もっとも、警察がセクハラの温床であることは全国の女性記者らには周知の事実

▼県でも女性記者2人へのセクハラ発言で捜査二課長目前のエリートが左遷されたことがあるが2年ほどで復帰した。「ミカン箱」が腐り出したのは昔むかしのことである。