伊勢型紙製作は「天職」 黄綬褒章・業務精励坂哲雄氏(80)

「栄えある受章をうれしく思う。いつも支えてくれた妻のおかげ。2人でいただいたようなもの」と喜びを語る。

中学卒業後、15歳で伊勢型紙の道に入り、現在まで65年間、伊勢型紙製作技術者として型紙を彫り続けてきた。

「あっという間だった。苦しい時もあったが、やめようと思ったことは一度もない。型紙を彫ることが自分の天職」と半生を振り返り、「人とのつながりを大事にしながら、丁寧な仕事を心がけ、まじめにやってきた」と穏やかな笑みを浮かべる。

縞彫りは鋼の定規に小刀をあて、手前に引いて均等の縞柄を彫る技法。精緻ながらも決して無機質ではない文様の数々は、高度な技術力と気の遠くなるような根気のたまものだ。

現在は、仕事の傍ら市内外の公民館で美術型紙サークルの講師を務めるほか、仲間たちと「伊勢型紙技承会」を設立するなど、制作活動にも励む。「無心になって彫るのは楽しい」と、うれしそうに目を細める。

今回の受章を励みに「これからも、伊勢型紙製作技術者の名に恥じないよう、後継者育成とともに伝承、普及に力を入れていきたい」と力強く抱負を語った。

〈略歴〉昭和33年、伊勢型紙の道に入る。平成5年、伊勢型紙技術保存会の立ち上げとともに研修生となり、彫刻4技法のうち縞彫りの技術を習得。同15年から縞彫り会員として活動する。現在、同保存会理事。令和3年度文化庁長官表彰。伊勢型紙彫刻組合長。