伊勢新聞

2024年4月26日(金)

▼24年ぶりになるか。県の公立学校教諭が旧被差別部落の土地を巡って差別問題を起こすケースである。この間、県人権施策基本方針が何度か改訂されて、人権条例が制定され、法律として部落差別解消法もできた。が、状況は変わっていないことになる

▼進歩が見られないのだ。後退さえ感じさせる。24年前は自治会の分離運動の中で、リードした高校教諭が「お嬢さんの将来に良いですしね」などと発言。旧被差別部落の地域から離れることの差別事象としてとらえられた。裁判で発言の差別性は認定されたが、県の同和教育行政が厳しく批判された

▼今回は、購入した土地が旧被差別部落にあるとして、公立学校の教員が業者に契約の解除を要求。業者は応じたが、教員は業者を非難し続けたという。県は土地差別の強いことで知られる。赴任した報道機関の支局長がアパート探しで旧被差別部落の土地にあたると業者から説明を受けたと驚いていた

▼起業してまもなく本社所在地の“弱点”を指摘されて転居したり、行政係争を報じたら、背景として土地差別があるという投書がきたこともある。県が不動産・宅建業者を対象に調査して数年啓発したが、結果はこの通りということだろう

▼部落問題の県民調査では県職員、教職員の差別意識が高いのが恒例だ。24年前の判例で県教委の腰は引けている。一見勝之知事が条例に基づき教職員を「説示」し、県教育長がそのことで各市町教育長に再発防止の協力を求めたという

▼県の人権行政は抜き足差し足……へっぴり腰。