伊勢新聞

2024年4月23日(火)

▼里親登録を抹消した県の措置の取り消しを求めて、名張市の親子が訴訟の準備をしているという。虐待があったとして1年ほど前に取られた措置。訴訟で虐待の証明はできず、津家裁は2人の里子のうち1人の養子縁組を認めたが、1人は施設に収容されたまま。元の里親夫婦との四人暮らしを求めて訴訟を起こすという。養子縁組がなった養子も原告になるようだから、家族の中に法律や制度を持ち込むことは難しい

▼こじれた原因の一つは、県の手続き上のミスもあったらしい。当事者は児童相談所だから、ああまたか、という気にはなる。里子のほおになぐられたような跡があったと報告されたことから県は里親抹消に踏み切ったが、決められた里親からの弁明を聴取しなかったという

▼養子縁組した男子高校生は15年前から里子としてともに暮らし、施設にいるという男子中学生も11年間も一緒に生活していたという。入り組んだ人間関係、感情が垣間見えてくるが、どこの家庭でも大なり小なり、ありそうなことと言えなくはない

▼証拠はないが虐待は事実と県は確信しているようだ。1人を施設に収容しているのだから、当然の認識といえる。証拠がどうあれ、虐待を確信している以上、子どもを守らなければならない。「裁判になれば主張すべきことは主張する」と県子ども・福祉部。が、抹消処分の妥当性については「個人情報に当たる。答えられない」

▼先の4歳女児暴行死事件と里親制度とでは、前者は家族に遠慮し過ぎ、後者は家族に遠慮がなさ過ぎる気がする。