大観小観 2024年4月12日(金)

▼桑名市のパチンコ店駐車場で炎天下の車中に3時間放置されて生後5カ月の児童が衰弱死するという平成24年の痛ましい虐待死事件は、乳児院からの2度目の一時帰宅中だった

▼1度目は一泊二日で「楽しく過ごせた」と父親が報告。2度目の外泊を巡っては産後鬱と診断されていた母親に対する父親の経過観察が変化し、当初と異なる日程で実施され、その期間中に惨事が起きた

▼北勢児童相談所と乳児院は連携を図り情報を共有して「乳児院の専門性を高める」とともに、児相と乳児院は「(一時外泊の)意義と潜在するリスクを認識して対応する必要があった」と検証委員会は指摘した

▼11年後に再び起きた児童虐待死事件。県は根絶に向けて関係条例の改正を検討するという。一見勝之知事は定例記者会見で「(虐待防止の取り組みを)より広く、より深く規定する」

▼具体的には、今回の事件で致命的とされる児童の安全確認や、これまで散々指摘されてきた関係機関との連携などを、詳細に明記することを想定。一時保護の判断などに活用するAI(人工知能)について明文化することも検討するという

▼実務的により効果的な手法を駆使していくということだろう。例えば、乳児院退院前の親子交流機会の実施。先の桑名市の事例でも一時外泊の形で実施してきたが、外泊中の観察は家族任せだった。最終的に育児は家族に委ねるという児相の伝統的考えが親に寄り添い、児童に危険をもたらしてきた

▼NPOなども含め、外部有識者の参加も考えていく必要がある。