三重県は9日、県庁の敷地内で予定していた災害時用マンホールトイレの完成式を延期した。強風により、トイレを覆うテントを十分に固定できなかったことが理由。非常時を想定した対応の課題が露呈した格好。担当者は「強風は想定外だった。対策を考えたい」としている。
県によると、このトイレは県議会議事堂西側の公用車駐車場に設置。災害時は16基の便器とテントを設け、マンホールを開けて使う。1000人が10日間ほど使える容量があるという。
断水や下水管の破損などによって県庁のトイレが使用できない事態を想定した対応。昨年度の一般会計当初予算で約3160万円の事業費を計上し、昨年10月から工事を進めていた。
9日の完成式では、防災対策部の担当者が完成したトイレを報道関係者に披露する予定だった。一見勝之知事も出席し、あいさつをした後に写真撮影に応じる予定だったという。
県は午後4時から式を開く予定だったが、開催の30分前になって報道各社に延期を通告した。担当者は延期の理由について「風が強く、テントが不安定な状況だった」と説明した。
一方で「延期は念のため。強風でテントが吹き飛ぶ可能性は低く、災害時の使用に問題はない」と強調。「取材をする記者にとって(テントがなければ)どうかなというのもありまして」とも語っていた。
ただ、現場では1時間以上にわたってテントの設営に悪戦苦闘する県職員らを、複数の記者が目撃していた。強風で吹き飛びそうになったテントを5人がかりで抑える場面も見られた。
この状況について問いただすと、担当者は「正直に言うと、このような強風は想定していなかった」と認めた。「テントを固定する土のうを準備するなど、対策を考えたい」と話した。
式の延期を受け、記者らは「想定通り」などと納得の様子。ある記者は「揺れには強くても風には弱いというのか。地震以前の問題ではないか」と語った。