2024年4月9日(火)

▼着飾った小さな紳士淑女が、両親らにはさまれてすまし顔で歩いて行く。近くの小学校の入学式帰りの親子連れにすれ違った

▼入学シーズンであり、入社シーズンである。リクルートスーツの若い男女のはつらつとしたグループを見かけるのもこの時期である。3月中旬は夏日にも見舞われたが、下旬は雨模様。30日の桜の開花宣言は昨年より8日遅かった。満開は4月2日で、曇り、時々小雨の空模様ながら、しっかり咲き誇って門出を祝福している

▼住宅街の道路沿いに大型の運搬カーが並ぶのもこの時期。テレビCMでおなじみの各引越センターの車が勢ぞろいし、ぎっしり詰まった家具類を作業員らがアパートの部屋に運び入れていく。意外に少人数なのはプロだからか。大人数で一気に引っ越しを手伝った日々を思い出す。東京の新聞販売店で住み込みのアルバイトをしていたころの話だ

▼引っ越してくる人は新聞勧誘の成功率が高く、いち早くかけつけるのが各紙販売員の競争だ。引っ越し荷物を積んだトラックに出くわしたらしめたもの。新聞名を名乗り、お手伝いしますと声をかける。断る人は少ない。店から若い衆を呼び、あっという間に運び込んで契約成就

▼都営アパートの新築が相次いだ頃は入居は抽選。当選を機に所帯を持つ若夫婦が多かった。入居日は2日ほどに指定。当日は各紙販売店にとって“戦場”だった。新聞社の旗を持ち、引っ越しらしいトラックに飛び乗った

▼釣りに例えれば入れ食い状態だが、契約の判を押してくれた入居者の顔も輝いていた。