伊勢新聞

<まる見えリポート>津市大門・丸之内地区の実験、賑わい創出で6倍の人出

【昨年11月に開かれた大門地区の実験では、道路中央に芝生を敷いて来場者の憩いの場を創出した=津市で】

衰退が著しい三重県の津市大門・丸之内地区の活性化に向け、昨年10月から11月にかけて、道路空間を活用して実施した賑わい創出の実験結果がまとまった。両地区とも期間中は平日ピーク時の6倍以上の人出があり、来場者、出店者ともに取り組みに賛同する意見が大半を占めた。今年度はこの結果などを踏まえ、引き続き方策を検討していくが、検討に終始していては再生への道のりは遠い。スピード感も求められる。

昨年3月に官民で設立したエリアプラットフォーム「大門・丸之内 未来のまちづくり」(辻正敏会長、事務局・津市)が活性化策を探るための第一弾の取り組みとして手がけた。

丸之内地区では昨年10月下旬の1週間、国道23号の東側1車線約370メートルを規制。車道上にキッチンカーを出店し、歩道にはテーブルやイスを配置して訪れた人が飲食できるようにした。

【昨年10月に実施された丸之内地区の道路空間活用実験。初めて国道23号にキッチンカーが出店した=津市で】

大門地区は昨年11月中旬の1週間、立町・大門大通りの道路を利用し、キッチンカーの出店などを実施。このエリアは車両通行が規制されているが、将来的な通行の可能性も見込み、車両通行を想定した実験も行った。

実験は道路空間の活用と、平日も含め恒常的な人の流れをいかに作り出すかを検証するのが狙い。期間中に来場者や出店者、沿道店舗の関係者らにアンケートや聞き取り調査を行い、実験結果をまとめた。

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結果は総じて良好だった。丸之内地区では、歩行者の通行量は通常時に比べ平日平均3・6倍、同ピーク時6・2倍に増加。1日当たり平均839人、1週間で計5231人が飲食などで利用した。

来場者の9割以上が取り組みについて賛同。出店者の8割以上が両地区への出店に魅力を感じ、うち半数が実店舗への出店にも興味を示した。国道23号の1車線規制も渋滞や事故の発生は見られなかった。

大門地区は歩行者の通行量は平日平均4・5倍、ピーク時6・7倍を記録。飲食などの利用者は1日平均350人、1週間計2278人だった。丸之内地区と同じく来場者、利用者とも9割以上が取り組みに賛同した。

車両通行については、来場者の6割が賛成、反対2割で、沿道店舗では賛成が半数、反対2割などの結果となった。

エリアプラットフォームの道路空間活用チームリーダーを務める丸之内商店街振興組合の岡本恒事務局長は「初めはキッチンカーをどう呼んだらいいのかも分からず手探りで進めたが、自分たちで一から作り上げ、汗をかいたことが結果につながり良かった」と手応え。その上で「イベントではなく、日常の姿に変えていかなければならない」と今後に意欲を示す。

結果は良好だったものの、すぐさま車道活用など道路整備に着手するわけではない。今回の結果を踏まえ、今年度は具体化に向けた検討や、道路管理者の国や市との協議などを進めていく考えだ。道路活用以外の方策も模索していく。

まちの姿をつくり変えていくにはさまざまな調整が必要で、時間はかかる。エリアプラットフォームがまとめるまちの将来像「未来ビジョン」も20年先のロードマップを掲げている。

とはいえ、国道23号の車道利用の具体的な検討が始まったのが17年前の平成19年だ。もしそのとき着手していれば、今のまちの姿は変化していたかも知れない。実行力も問われる。

今回、道路を活用した賑わい創出の実験だったが、既存の空き店舗対策も急務だ。大門では一部空き店舗をシートで覆い、来場者に目立たないようにした。いくら流行のキッチンカーを登場させても、空き店舗が多ければまちの魅力は損なわれる。