伊勢新聞

2024年3月31日(日)

▼昔、三重県の部長との雑談で「あんたたちマスコミと、我々行政との仕事のやり方の違いが分かるか」と聞かれたことがある。部長は続けた。「仕事が一本のゴムひもとすると、あんたらは一時的にピーンと張り詰めて、また弛緩(しかん)する。我々は、一定の張り加減で、いつまでも継続していく」

▼津市で母親の虐待で4歳の女児が死亡した事件を受け、県の児童相談所の対応を検証していた外部委員会が報告書をまとめた。「過去の虐待事件でも、今回と同じく安全確認や情報共有などに対する指摘が繰り返されてきた」

▼20数年前の幼児虐待死事件、児童虐待重篤事件で、県は緊張し、児相の人員を増やし、組織を拡充し、職員の能力不足を補うツールとして高価なAⅠ(人工知能)を導入した。今回も、外部検証委員会は、虐待通報のある児童を見にも行かない児相職員の危機意識の欠如を指摘し、AⅠに関しては、有益なツールとして「十分に活用されているとは言い難い」

▼ネコに小判、ブタに真珠だったということか。どころか、AⅠが危機を見逃した言い訳にも使われた。単なる宝の持ち腐れ以上の迷惑を、県民にもたらしたことになる。職員気質が昔とは様変わりし、のど元過ぎれば熱さ忘れる体質になってきたということだろう

▼児相だけの問題ではないのかもしれない。一見勝之知事は再発防止策として児相職員の増員など、昔と同じことを言っている。学問に王道なし。いつの時代もやることは同じだろうが、たゆまず、どう継続させるかが新たな“職員教本”である。