伊勢新聞

2024年3月14(木)

▼あまりに多い三重県企業庁のくじ引きによる落札者決定の改善策として包括外部監査人が提案した「変動型最低制限価格制度」の試行について、企業庁は「慎重を期す」。要は、あっさり袖にした。理由は「(適正な施工が見込まれない)ダンピング受注の防止に十分機能しないと想定される」

▼では、別に何かいい知恵があるかというと「予定価格の事後公表や総合評価方式の対象拡大などを検討する」。贈収賄事件を起こした総合評価方式をさらに増やすというのだからノド元の熱さが冷える暇もない

▼公共事業の入札は、価格競争が原則。が、企業庁がそれ以上に重視するのは「適正な施工」であるらしいことがよく分かるような説明ではある。適正な価格競争か、適正な施工か。どちらも重要には違いないが、前者は制度上の原則であり、後者は職務執行上の担当職員の責任である

▼入札は事実上、後者を重視してきた。一般競争入札より、特定業者を選抜した指名競争入札が中心になったのはそのためである。貿易不均衡だと海外から批判され、一般競争入札への転換を余儀なくされたが、それでもダンピング防止などを名目に総合評価方式が採用され、工事実績ごとの評価点を設定し、業者にランキングを付けている

▼かつて談合の温床として一社入札は入札不調にしていたのをなし崩し的に横行させていたり、くじ引きを乱発させているのも、要は職員の執行上の都合だろう。それらをやめてもし業務に支障が出たら誰が責任を取ってくれるか。その問題を解決させない限り、くじ引きも一者入札も、なくなりはしまい。