<これでいいのか三重>若者、県外進学で地元戻らず 就職支援も効果は未知数

【県が開いた企業の説明会。県内外の学生らが詰めかけた=津市内で】

三重県内の若者の県外への流出が止まらない。15歳から29歳の転出超過数は昨年1年間で4595人と過去10年で最多となった。進学などを機に県外へ出たまま戻らないパターンが多いと見られる。県では就職支援などを打ち出し、定着やUターンを促すが効果は未知数だ。

県内では昨年、流入やUターンの転入2万4千人に対し流出は3万人となり、転入より転出が多い転出超過は5700人となった。このうち、15―29歳が約8割を占める。

転出超過は今に始まったわけではない。年々増加傾向にあり、2019年に最多に達した。コロナ禍でいったん減少に転じたが、通常に戻った昨年は特に若者の転出増が一気に進んだ。

流出の背景には、大学など高等教育機関の収容力が低いことにある。県内の高校を卒業し、大学に進学した学生のうち、約8割が県外の大学に進んでいる。収容力に加え、学部など選択肢が限られているのも大きな要因と見られる。

とはいえ、大学の数を増やすことは容易ではない。県は県立大学の新設に向けた検討を進めたが、有識者会議などの議論を踏まえ、昨年見送った。進学で県外へ出て行く若者を食い止める。そんな“水際対策”を取ることは事実上、困難な状況となっている。

昨年8月と今年2月に県が主催した企業の説明会。県内外の大学生らを対象に、県内企業が仕事内容や魅力をPRした。対面での本格開催は約4年ぶり。参加企業を「みえの働き方改革推進企業」に認定された企業から抽出したのが特徴だ。

県雇用対策課によると、民間調査などで、昨今の学生が就職先を選ぶ際に最も重視するのが、企業の知名度や給料などより「職場環境」だという。働き方改革を進める企業への若者の関心は高いとする。

各ブースには学生らが詰めかけ、盛況に終わった。参加企業の関係者は引きも切らない応対に、「喉がカラカラになった」と手応えを示した。

県の調査で、県外の大学に進んだ県出身者が県内企業に就職する割合は3割程度にとどまっている。一方、東京、関西、中京圏の大都市圏に住む県出身者を対象に「どんな支援や機会があれば三重に戻るか」を聞いたところ、31%が就職支援となり、次いで住宅支援の23%だった。

そのため県では、若者の流出を食い止める一手として、就職支援を重点に置く。進学でいったん県外に出た県出身者や県外の若者らに県内での就職を促し、それにより「人口環流」を目指すのが狙いだ。

就職支援以外にも、出産・子育てや移住支援、ジェンダーギャップの解消などを進める。取り組みは多岐にわたるが、世界的企業の進出や有名大の誘致など、一撃で増える策でもない。「地道で長い道のりになる」(県人口減少対策課)のが実情だ。

大都市圏に住む県出身者に、県に戻るために必要な支援などを尋ねた前述の調査。実は最も多かった回答が「どんな支援や機会があっても戻ることを検討することはない」(34%)だった。

各種支援は必要だろう。ただ、そもそも「三重」は若者にとって魅力のある場所なのか。まちの風景を見る限り、展望はまったく見えない。