伊勢新聞

2024年3月13日(水)

▼三重県無形民俗文化財、多度大社(桑名市)の上げ馬神事の動物虐待根絶を求める県議会への請願が、常任委員会で6対1で不採択とされた。22日の本会議で決定の見込み。昨年12月議会では「大社側の改善策を踏まえ」として42対2で継続審査になった。先月22日に発表された改善策が評価されたとみえる

▼目玉である馬が飛び越える約2メートルの壁を撤去するほか、駆け上がる坂の勾配を緩やかにし、土の走路に砂を敷き、ムチの素材を柔らかくして、馬への合図のためだけに用いる。馬も乗り手も事前の訓練、練習を入念にする―という

▼県文化財保護審議会の答申を受けた県教育長の勧告を申し分なく満たす内容。神事関係者や馬術専門家、獣医師、学識経験者はじめ県と桑名市まで加わった「在り方検討会」で検討した提言のすべてを、改善策は受け入れたという。指導する監督者と監督される側が一緒になって妥協案を探って結論づけたみたいなものだ。どこからも異論の出てきようもない

▼もっとも、異論の出ないことと満点とは必ずしも一致しない。上げ馬神事への勧告は2回目。前回も異論の出ない改善策に基づき継続となったのだろう。二の舞にならぬ保証はない

▼「時代の考えや世相に応じて柔軟に形を変える」(福永和伸県教育長)のが文化である。同じ馬が対象でも、馬の文化の専門家はどの検討段階にもいない。常任委で不採択に反対した吉田紋華委員は「動物虐待をなくす姿勢を明確に示す必要がある」

▼動物愛護・虐待の専門家も加わっていない。