鹿児島県で昨年9~10月、特別国民体育大会「燃ゆる感動かごしま国体」が開かれた。新型コロナウイルスの影響で当初予定した令和2年から3年遅れての開催で、名称に回数を付けず特別大会として行われた国体で、開催県の鹿児島が、東京都に続く男女総合(天皇杯)2位に食い込む健闘を見せた。
その一方で、令和3年の国民体育大会「三重とこわか国体」(コロナ禍で開催を断念)に向けて選手強化を行ってきた本県の天皇杯順位は15位で、一昨年の栃木国体の12位からやや後退する結果となった。
首都圏など一部の大規模県を除いて、国体の開催に向けて天皇杯順位を上げてきた県は、開催年に総合優勝を果たした後、特に2年後から順位が急落すると言われる。平成25年ごろまで3~40位台で低迷した順位を10位台まで上げた本県の選手強化策が岐路に立っている。
昨年の鹿児島国体で獲得した本県の天皇杯の総合得点(1274・5点)は決して低くはない。本県としては歴代4位の高得点で、5年前の茨城国体であれば12位、栃木国体でも14位に相当する点数だった。
陸上競技、レスリング、重量挙げなどの個人競技に加えて、三重とこわか国体に向けて新たに発足したバレーボール、ラグビー、ソフトボールなどの社会人チームの活躍もあり、団体競技で入賞が相次いだことも得点増につながった。
県としても手をこまねいているわけではない。県ゆかりのトップアスリートの活躍が県民に夢、感動を与えるとして、三重とこわか国体が中止になった後も競技力向上に向けた取り組みを継続する方針だ。
令和5年度から始まった第三次県スポーツ推進計画でも、三重とこわか国体の後も国民体育大会で男女総合10位台前半(15位以内)の競技力を確保する育成強化支援が必要と記載した。
特に、競技得点の高い団体競技の成績は天皇杯の順位に大きく影響することもあり、県を代表するチームの強化支援のため、強化活動に要する経費を支援したり、運営・経営の専門的な知識やノウハウを持つアドバイザーを派遣して体制の強化を図るとしている。
それでも懸念が残る。成年選手の強化策では、就職支援システム「アスジョブみえ」を活用して県内に選手を呼び込む仕組みはできたが、勤務後仕事と練習の両立に悩む選手は一定数いる。少年選手の強化現場では有力な中学選手の県外流出が課題となっている。
何より、同計画の最終年度は隣県の愛知を中心にアジア競技大会が開かれる令和8年までとあって、「次の目標がないのにどう強化すればよいか」との不安の声は根強い。
昨年11月に、2035年の国民スポーツ大会(=国スポ、国民体育大会から改称)の県内開催に向けて調整を始める意向を示した県。これまで積み重ねた強化策の成果を一過性で終わらせないためにも、早めの一手が求められる。