<これでいいのか三重>SNS型投資詐欺 被害激増、捜査追い付かず

SNS(交流サイト)を通じて知り合った人物などから投資名目で多額の現金をだまし取られる「投資詐欺」の被害が全国的に増加し、三重県内でも頻発している。昨年1年間に県警が把握した投資詐欺の被害は前年の5・7倍(98件増)の119件で、被害額は11億円を超えた。県警は「SNSで知り合った人から投資を持ちかけられたら詐欺だと疑ってほしい」と注意を呼びかけている。

県警によると、投資詐欺の被害相談は昨年春ごろから急増。昨年は特殊詐欺の被害額(約7億円)より多かった。今年に入ってからも被害は止まらず、2月末までに51件が報告され、被害額は4億円を超えた。

投資詐欺の入り口は主に投資に関するSNSの投稿や広告、マッチングアプリ。LINE(ライン)などを通じて投資を勧められ、著名人を装ったアカウントから連絡が来ることもあるという。

特定の「投資アプリ」や「投資サイト」などの使用も勧められる。現金を指定口座に振り込むよう求められ、アプリなどには振り込んだ実際の金額が表示されるため、被害者はアプリを信頼してしまう。

時間経過でアプリ上に表示される残高が増え、初期には一部を現金化できることも。しかし、その後は引き出すことができず、手数料などを名目にさらに現金をだまし取られるという。

一方、激増した被害に県警の捜査体制が全く追い付かない。昨年、県警は投資詐欺で8件、額としては約560万円分を摘発。今年は2月末までに3件、約300万円分の立件にとどまる。

ある捜査関係者は「犯人を特定する手掛かりが少ない」と捜査の難しさを打ち明ける。

手掛かりの一つは口座の特定。県警は1月、SNSで知り合った女性にうその投資話を持ちかけ、現金を振り込ませてだまし取ったとして、神奈川県の男を逮捕した。逮捕には女性が振り込んだ男の口座が大きな手掛かりになったという。

だが、犯人側も対策している。担当者によると、現金の振り込みに毎回異なる口座を指定するという。個人口座を指定されることも多く、担当者は「不審な口座に振り込まないでほしい」と話す。

SNSアカウントも少ない手掛かりの一つ。しかし、犯人側が海外サーバーを複数利用している場合もあり、アカウントの特定には時間と手間がかかる。

また、被害者が犯人側と直接会うことなく、メッセージだけで連絡することも捜査を困難にしている。犯人側の声を聞くことすらないため、性別や国籍、関わる人数など、犯人側の全体像をつかみにくいという。

投資で利益を得るにはリスクが付きまとう。ましてや投資詐欺にだまされてしまうと大切な財産を失うだけだ。担当者は「SNSで知り合った人からの投資話を信じるようなことはせず、安易に投資に踏み切らないでほしい」と呼びかける。