伊勢新聞

2024年3月5日(火)

▼県企業庁発注の水道設備工事を巡る贈収賄事件で、収賄に問われた同庁OBと現職だった県職員に対する判決はいずれも懲役1年6か月、執行猶予3年だった。事実関係に争いはなく、検察、被告双方に控訴の意思はないようで、裁判官も1人のよう。一件落着で、裁判としては簡単だったということになるのだろうか

▼2人は職員時代の知見を生かして入札に必要な技術資料の作成や指導、助言をし対価を約束をした。「犯行の悪質さは低いとは言えない」と裁判官。その一方で、同点の業者が失格して落札したことから「公務の公正や社会一般の信頼を損なった程度が大きいとは言えない」

▼いったいどっちなんだと言いたくならぬか。職員は、退職直前に担当した職務に関係する企業には一定期間、天下りすることが禁じられている。業務に精通していて就職先企業に有利になるからで、担当窓口には後輩も多く、情報も得やすいからだ

▼県庁時代に培ったノウハウを県の振興に生かす目的と、公平・公正な競争を確保するための折衷案でもあり、期間が過ぎたから、さあいいですよ、という性格のものではない

▼談合情報で落札者決定が保留になったのは1月。いまだに談合が横行していることをうかがわせたが、その談合防止の切り札として採用された総合評価方式が、実は担当職員の指導で誰もが最高点になることを県民に印象づけたのが今回の事件でもあった

▼しかも、談合と違って首謀者は県職員。公務の公正や社会一般の信頼を根底から覆した事件でもあった。