伊勢新聞

2024年3月1日(金)

▼昔は貧しい家庭が多かった。肉も「細切れ」しか買えず、買い物は子どもの仕事だったから「細切れ100グラムください」などと大声で注文していた。小声になったのは、お店にとってあまりいいお客ではないと知らされてからだ。対等の関係だと思っていたのが、売って“もらっている”という意識になった

▼「お客様は神様です」という感覚になったのは国民的歌手と言われた三波春夫がそのフレーズを言い出してからだ。大量消費社会でもあった。三波春夫の意図とは関係なく、金を使う、支払う側が“偉い”、換言すれば、大勢の財布のひもを緩めさせた人間が“偉い”という時代になった

▼本来ウィンウィンの関係で、ともに得をするのが商売の本質だが、時の環境でシーソーゲームのようにどちらかへ触れる。金持ちが理屈抜きに偉いという現代では、カネを使う側を気持ちよくさせる時代でもあるのだろう

▼一見勝之知事が客の迷惑行為や悪質なクレームなど「カスタマーハラスメント」(カスハラ)に関係条例の制定も含め、何らかの対応を検討する考えを示した。東京都の条例制定の動きを別にすると、連合三重からの要望が動機づけになったという。散々消費者をおだててきたが、身の程知らずに舞い上がるお調子者が増え、いささかもてあましてきたか

▼身内の店員のぐちを聞くと、厚かましい、無理難題を言うお客は実に多い。そのせいか、客の立場としては実に手前勝手なルールを押しつけてくる店や、不快な店員が増えている気がする

▼カスハラの問題かどうか。