伊勢新聞

2024年2月29日(木)

▼いつだったか、県人事課のある係長が、出先機関の課長、すなわち課長補佐級への異動の内々示を受けて、きっぱり断ったことがある。人事課職員が人事の内々示を断るなどは前代未聞だった。しかも、示された異動先は地味なポストとはいえ、知る人ぞ知る栄転コースだった

▼まことしやかな話として伝わった断りの口上は、こうだ。「私は木本高校出身です。県庁でどんなポストを歩むかは故郷のみんなが注目している。本庁の係長というのならともかく、誰も知らない(北勢の)出先機関の課長などはまっぴらご免」

▼上下関係が厳しかったころの県庁で、中でも最右翼とされた人事課だから、上司が激怒した。係長への横滑りとなり、これから力を入れていく部門だと辞令で説明されたが、それが本当かどうかは「人事課にいたのだからすぐ分かる」というのが周囲のもっぱらの同情論だった

▼谷川孝栄県議(東紀州選出)が県議会の議案質疑で、木本、紀南の両県立高校統合議案に反対を表明した。統合はやむを得ないが、新校名に賛成できないからだという。地震・津波襲来がいまにも予測される地域で、避難目標でもある「木本高」の名称が変わっては混乱を招く。「命を守るため」に校名継承を求めて、条例改正にストップをかけることに意義があるのだという

▼当局の答弁は求めなかった。何を聞いたところで了解や理解ができて、主張を変えたりするような性格の話ではないということであろう。谷川県議は、もう1人の同僚県議とともに木本高校出身だそうである。