生活保護減額処分取り消し 津地裁判決「政治的判断背景」 三重

生活保護費の引き下げは違法だとして、三重県内の受給者20人が津▽四日市▽桑名▽松阪―の4市を訴えた裁判で、津地裁(竹内浩史裁判長)は22日、「専門的知見を度外視した政治的判断があった」などとして、生活保護費の引き下げを取り消すよう命じた。

判決などによると、厚生労働省は平成25年から3年間、物価下落などを踏まえて生活保護の基準額を平均6・5%引き下げた。物価下落については厚労省の独自指数を用いていた。

竹内裁判長は判決で、生活保護に対する国民の不公平感や不信感を背景に「厚生労働大臣が専門家の意見を軽視して、政治的方針を実現しようとしたと見るほかない」と指摘。

厚労省が用いた独自指数を「物価が一時的に上昇した平成20年を起点とする合理的な理由はなく、恣意的な選択をしたとみられてもやむを得ない」と問題視した。

今回の生活保護費の引き下げを「受給者の最低限度の生活を脅かす」とし、「専門的知見に基づく検討が不十分で、手続きには過誤、欠落があった」と結論付けた。

原告弁護団は判決後の記者会見で「請求がほぼ認められ、うれしく、意味のある判決。主張を正面から取り上げてくれた。国は解決に向けて動くべきだ」と話した。

津市の前葉泰幸市長は「控訴について国と協議し、今後の対応を検討する」とコメント。他の3市は取材に「判決の内容を精査して今後の対応を検討していく」などと答えた。

原告弁護団によると、一連の訴訟は全国29の地裁で起こされ、地裁の判決は26件目。うち15件で減額処分の取り消しを認めている。