伊勢新聞

2024年2月21日(水)

▼来年度当初予算案などを上程した県議会で、一見勝之知事は提案説明の中で「県民の信頼を損なう不祥事が発生し、国政で政治不信を招くような事態が生じている」と述べた。贈収賄事件で逮捕者を出したことと、自民党の裏金問題を念頭に置いたらしい

▼中央政界の不祥事について、記者会見で問われて知事が応じることはあるが、自ら発言とすることは珍しい。官僚として長年、その中に身を置いてきた表れともみられるが、県が県民の信を失うのは、細かい事務処理ミスの積み重ねであきれられるからではないか。贈収賄事件を受けての1日の幹部職員を対象にした倫理研修でも、不祥事の背景として▽無知▽過失▽故意▽確信―の4点が指摘された

▼無知と過失が双璧だろう。収賄で逮捕された職員さえ、楽観視していたふしがある。周囲を見てこれぐらいはよかろうと判断してきたことが、ぽろぽろと、こぼれ落ちていくようにみえる

▼「信なくば立たず」というのは、知事得意の中国古典から名言の引用か。孔子が「政治で最も大切なのは国民の間に信頼の心を持たせること」と語ったのが原義だが三木武夫、小泉純一郎氏らは自民党総裁選への出馬理由として使った。「県民から信頼される県政を取り戻すように努めていく」の意気込みが伝わったかどうか

▼全協で示した来年度の行政展開方針(最終案)は「子どもたちの輝く未来の実現」など5項目。フリースクールへの支援、ジェンダーギャップ解消など少子化に照準を当てた。ちぐはぐさが収束されつつある気はする。