伊勢新聞

2024年2月20日(火)

▼県無形民俗文化財、多度大社(桑名市)の上げ馬神事の動物虐待根絶を求める県議会への請願が昨年12月議会で45対2の賛成多数で「継続審査」になった。大社側が示す改善策を踏まえて改めて採択する見通しと報じられたが、大社側は今年5月の神事を予定通り開催するという。県職員が立ち会い、不適切行為を監視するらしい。県議会だけがカヤの外か

▼地元も一枚岩と言えるのかどうか。神事に例年7地区参加するが、今年は1地区が氏子組織から脱退し、一部が参加を見送る見込み。伝統行事の継続に黄信号がともっている格好か

▼昨年の神事で馬が1頭骨折し、殺処分されたことから、動物愛護団体が動物愛護法違反容疑で主催者らを告発した。県文化財保護審議会が問題を認め、安全面の改善を求める建議を福永和伸県教育長に提出し、同教育長は「文化は時代の考えや世相に応じて柔軟に形を変える必要がある」として、安全管理の徹底などを求める勧告をした

▼県教委の勧告を受けて、多度大社は直ちに改善策を提出した。馬が飛び越える土壁を低くし、坂の傾斜を緩め、走路に敷かれる砂利などの素材を改めるという。待ってましたと言わんばかりの回答とは言わないまでも、指摘されたことを改めるだけで、伝統文化の維持ができるか

▼審議会の建議は平成23年に続いて2度目。文化財保護審にしろ県教委にしろ納得したはずの対応だが、13年間しか持ちこたえられなかった。当時の注意事項がきちんと守られていたかどうかを含め、精査する必要はある。