伊勢新聞

2024年2月19日(月)

▼三重県の予算企画で3回連載の最後は「特殊詐欺対策」だった。「例年は県庁に比べて事業関係の予算が少ない県警」という。財政当局から「物言い」はついたものの要求通りの1200万円を獲得し、7年ぶりに1千万円を超えたが、昨年は被害件数274件、被害額約7700万円。前年度比2倍近くで、過去10年で最多。焼け石に水の感は否めない

▼県警自身、予算は望み通りにとったがそれでどうかなるとはさらさら思っていないらしい。「そもそも特殊詐欺は捜査に手間と時間がかかる」とまず予防線を張る。昨年中の摘発は15人、45件で横ばい。大半が「受け子」で「主犯格とのつながりがないため、解決に至りにくい」「割ける労力は限られる」

▼「赤信号みんなで渡れば怖くない」というのは漫才ブームの時の人気コンビのギャグだが、全国の警察が言い出した感じだ。予算は高齢者宅への録音機の貸し付け、不審電話注意のチラシ配布、詐欺の寸劇に充てるが「何もしないわけにはいかない」からやるだけらしい

▼犯罪件数が減少する一方で、社会的不安感は強まっていると指摘されたのは5年ほど前か。ルシファー事件や国際ロマンス詐欺など、オレオレ詐欺から始まった特殊詐欺はさまざまに進化を遂げ、取り締まり当局の追随を許さなくなっているようだ

▼松阪地区広域消防組合の職員が詐欺容疑で逮捕されたと思ったら紀宝町議親子が資材置き場から鉄板などを盗んだとして現行犯逮捕された。社会不安に県警は対応できなくなっているのかもしれない。