伊勢新聞

<検証・県予算2024>破格の1200億円超え 贈収賄対策は見えず

【「破格」の補正予算で完成の時期を前倒しする国道421号(県提供)】

「破格の予算」。一見勝之三重県知事は昨年12月の定例記者会見で、公共事業で国から獲得した補正予算の規模をアピールした。通常は翌年度に示す道路の開通見通しを、この段階で公表する異例の会見だった。

補正予算の獲得は、当初予算よりもメリットが大きいらしい。国から将来的に交付税で補填(ほてん)される起債が可能で、県の実質的な負担が軽減されるためだ。財政担当者は「財政的には非常にありがたい」と喜ぶ。

この補正予算と新年度当初予算を合わせた公共事業費の総額は、前年度比8・1%(90億円)増の1205億円に上る。財政難だった平成29年度の約1・4倍。19年ぶりに1200億円を超えた。

「破格の予算」は全国的な傾向というわけではないらしい。ある職員は「一見知事の存在が大きかった」と強調。国交省の官僚を長く務めた経験を生かしながら、精力的に要望した結果だと解説する。

公共事業関連の予算は来年度、東海環状自動車道や北勢バイパスをはじめとする道路の整備に充てられる見通し。ダムの整備や河川の堆積土砂撤去、老朽化したインフラの修繕などにも使われるという。

一方、これらの予算が全て適切に使われるのかどうかは疑わざるを得ない。県庁では昨年、企業庁発注工事を巡る贈収賄事件で県職員が逮捕されたばかり。再発防止に向けた具体策を打ち出せないままだ。

それだけではない。県は昨年12月と今月、談合の疑いを理由に公共工事2件の入札を取りやめた。うち1件は事前の通報内容と入札結果が一致したため。もう1件は入札参加者らの技術提案書が酷似していた。

県は入札参加者らへの聞き取りを経て「談合の事実は確認できなかったが、疑いを払拭できない」などと結論づけた。ただ、実際に談合があったのかどうかは分からないまま。その後の調査は行われていない。

調査の手法にも不信感を抱かざるを得なかった。聞き取り調査に当たった松阪建設事務所と松阪農林事務所は、それぞれ工事の発注者でもある。入札を仕切る事務所が、談合疑いの調査も担うという構図だ。

県は「マニュアルに沿った調査で問題はない」と説明するが、官製談合の場合でも正常に機能したというのか。職員らは不正をしないという「性善説」に立っていないか。贈収賄事件が起きたにもかかわらず。