伊勢新聞

<検証・県予算2024>防災アプリ開発、外出先でも避難促す 情報収集に課題も

【県が公表した大雪に伴う被害状況の最終報。負傷者は「3人」だった。】

三重県は来年度、県民に災害情報を発信するスマートフォン向けアプリの開発に乗り出す。新年度当初予算には、開発費として1600万円を計上。年内にも開発し、運用を始める考えだ。

県によると、アプリではスマホの位置情報を基に、地震や津波、大雨などに関する通知を発信。避難を呼びかけたり、最寄りの避難所の方角を示したりする仕組みも備えるという。

東海3県では初の取り組み。外出中の県民にも避難を促すことが狙いという。担当者は「アプリを使い、いつ、どこで災害が発生しても迅速に避難してもらえるようにしたい」と話す。

ダウンロードの件数は「できるだけ多く」(担当者)と語るのみで、相変わらず具体的な目標値はないが、アプリの普及を狙った一斉訓練を予定するなど、一定の工夫は見て取れる。

ただ、そもそも県民に発信する情報の収集に課題があると言わざるを得ない。昨夏は災害対策本部のスペースを新設し、多くのモニターを並べたが、職員の能力が向上したとは捉えにくい。

県内が大雪に見舞われた先月下旬、県の災害対策本部は立ち上げから1時間ごとに被害状況をまとめた。本部の解散に伴う「最終報」では、雪による負傷者を「3人」と表記していた。

ところが、市町や消防に取材をすると、この3人以外にも転倒などによる負傷者の情報が次々と寄せられた。本紙を含む複数の新聞が翌日の朝刊で「11人けが」との見出しを打った。

関係機関に問い合わせれば入る情報を、なぜ県は把握していなかったのか。担当者は取材に「当時、市町からは3人分の報告しかなかった」などと説明。納得できる回答はなかった。

大雪の当時、危機管理担当の幹部らに「負傷者数は県の発表より多い」と伝えたが、幹部は「今から表彰式があるんで。担当に聞いて」と足早に立ち去った。意識変革を求めたい。

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「新型コロナ対策費を除けば過去最大」とされる県の新年度予算。県は新規事業を盛大にアピールするが、事業を担う職員らの「足元」に課題ははないだろうか。現場を検証する。