伊勢新聞

2024年2月14日(水)

▼出身である国土交通省の関連予算にはかねて獲得に自信を見せる一見勝之知事だが、リニア中央新幹線については慎重姿勢を崩さないのは、事業主体がJR東海だからだろうか。懸案だった水問題がひと山越えた。静岡県の粘り勝ちという感も強い

▼山梨県の実験線で、流量が減少する現象が起き、静岡県は大井川への悪影響を懸念し続けてきた。JR東海はもちろん、国や沿線自治体の反発を受けながら満足できる水量確保の提案を引き出した。見事というほかはない

▼公共事業については、県もいくどとなく痛い目にあっている。長良川河口堰(ぜき)事業や三重用水事業がそうで、三重用水は計画半ばで打ち切り。長良川河口堰事業の工業用水は長く垂れ流しになっている。近畿自動車道伊勢線のルートも、事前の問い合わせに応えず、ほ場整備が終わってからど真ん中を通るルートを決定し、地元が怒るのをなだめるため請願インターをつくった

▼環境保全基準も、県より低くしている。公共に役立つ事業は、不満があっても我慢すべきだという考えが長く浸透していた。長良川河口堰事業に最後まで反対した桑名市の赤須賀漁協の組合長は「東海地区全域から公益や公益やといわれ、刀折れ、矢尽きた」。それから数年後、河口堰を開こうという動きに「公益だと言った人に言ってくれ」

▼リニア新幹線は、水問題がクリアすると今度は、南アルプスの生態系への影響が懸念されて、水問題以上に深刻とされているが、どうだろうか。前倒しもいいが、一見知事の知見を発揮できないか。