伊勢新聞

<まる見えリポート>鈴鹿「みんなの保健室」 気軽に相談、交流の場にも

【齋藤助教から杖の使い方を学ぶ松村さん(右)=鈴鹿市南玉垣町の鈴鹿医療科学大学白子キャンパスで】

学校の中に保健室があるように、まちの中に保健室があれば、誰でも気軽に相談に行ける―。そんな思いで昨年9月に始まった鈴鹿市初の「みんなの保健室すずカフェ」は、三重県鈴鹿市南玉垣町の鈴鹿医療科学大学白子キャンパスで、毎月第2土曜日午前10時―午後2時に開催。医療、保健、福祉の専門スタッフがボランティアで相談に応じ、誰でも予約不要、無料で利用できる地域交流の場として、着実に成果を上げている。

主催するのは、同大看護学部教授の辻川真弓代表(64)らで組織する「鈴鹿みんなの保健室」。辻川代表の思いに共感した同学部の中村喜美子准教授(68)、元県職員で保健師と精神保健福祉士の和田正子さん(61)、元市職員で臨床発達心理士の坂公子さん(62)、元県がん相談支援センター長で社会福祉士の北村周子さん(67)の女性五人が「それぞれの持つ専門知識や経験を生かしたら、もっとまちは良くなる」と集まり、昨年7月に結成した。同学部内に事務局を置き、大学は無償で会場を提供する。

会場となる1階の学生ラウンジは通路に面したガラス張りで開放感があり、中の様子も分かりやすい。相談者が気軽に足を運べるよう、この場所を選んだという。

これまでに6回開催し、10―90代まで幅広い年代ののべ124人が訪れた。中心となるのは60代以上の高齢者世代。

薬の服用についての心配、主治医選択や白内障手術についてのアドバイスなど、病気や治療に関する相談のほか、悪性リンパ腫の友人への対応や夫の死別体験による辛さ、子どもの歯のフッ素塗布の必要性など相談は多岐にわたる。辻川代表は「自分のこと、家族のこと、友人のことなど、暮らしの中のいろんな困りごとがワンストップで一度に相談できるのが大きな特徴」と話す。

ここでの会話を楽しみに、ふらっと立ち寄る常連参加者も、すでに何人かいる。和田さんは保健師の視点で「気軽に来て誰かと話すことで元気が出ると、健康づくりにも役立つ」と保健室が誰かの居場所になることを歓迎する。

何気ない会話でも、寄り添う姿勢と必要な情報を見極める視点は忘れない。元三重大がん看護専門看護師の中村准教授は「私たちは、専門家として相談者のちょっと前で伴走するガイド役」と話し、「相談内容以外のことが問題の本質になることもある。相手の話を正しくキャッチして、適切な支援につなげるのも大事」と力を込める。

2月10日の会場を取材した。この日は17人が参加。今回初めてという同市十宮3丁目の杉本徹さん(73)は、処方された血圧の薬をきっかけに、疑問が出た血圧の仕組みについて質問。「病院では先生が忙しそうで深く聞けなかったが、納得できたので今夜はゆっくり眠れる」と安心した表情を見せた。

電車とバスを乗り継いで毎回来るという四日市市楠町の松村家寿学さん(90)は、理学療法士で同大保健衛生学部リハビリテーション学科の齋藤恒一助教(47)から杖の使い方を教わった。

齋藤助教は、前回松村さんから「腰が痛い」と相談を受けたため、持参したポールウオーキング用の杖を使って、持つ位置などをアドバイス。「体の負担が減るだけでなく、かっこよさも考えてこの杖を選んだ」といい、試しに使ってみるよう勧めた。

松村さんは「ここでいろんな人の話を聞くと、こんな人生もあるのだと勉強になる。楽しい」と笑顔を見せる。

今後の抱負について、辻川代表は「参加者の声を受け、ことしは地域にも出向いて(学外で保健室を)開催したいと思っている。市との連携もさらに深めていければ」と話した。