▼5日の日本卓球協会の発表では、津市出身の戸上隼輔選手はパリ五輪代表の候補予定選手になるらしい。1月の全日本選手権シングルス決勝で張本智和選手との死闘の末に3連覇は逃したとはいえ、第一人者として内定済みと思っていたが、内定と予定の違いに戸惑ったりもする
▼スポーツ界で、成績に必ずしもよらない代表選考がかつてはしばしば起きた。選考大会で勝利してもフロックと見なされ、世界で通用するかどうかなどの関係者の評価で落選することは珍しくなかった。最近ははっきり分かる点数で裁定されるようだが、卓球界ではポイントで上回る伊藤美誠選手が「中国に勝てる人材」などの評価で落選したなどのうわさも飛び交い、心配にはなる
▼素人考えだが、卓球は盤上が狭いこともあり、メンタル面が勝敗に影響するスポーツの最たるものの一つの気がする。先の戸上、張本戦も、どちらが勝ってもおかしくない。紙一重の試合だったが、レジェンド水谷隼さんの現役時代から後継ナンバーワンとみなされながら戸上選手の後塵を拝してきた張本選手が、土壇場で踏みとどまって3連覇を阻んだ気がしてならない
▼敗戦を糧にするのは、今度は戸上選手の番だろう。夢舞台まで、それを成し遂げるには、手頃な期間のように思える
▼小中学校時代に腕を磨いた津市の松生卓球道場館長の松生幸一さんは、卓球日本一を育てるという目標で同道場を立ち上げたという。「これまでも夢を現実にしてくれた。次はパリでメダルを取ってほしい」。すでに、感無量という。