三重県庁は人事の季節を迎えた。今年度は廣田恵子副知事(66)が4年の任期満了を迎えるほか、野呂幸利危機管理統括監(60)、更屋英洋総務部長(60)ら10人が役職定年を迎える。初の副知事人事を手がける一見勝之知事が従前通り庁内から登用するのか、国など庁外から招くのか注目される。令和6年度の県幹部人事を展望する。(年齢はいずれも3月末時点)。
今年度から60歳の定年が引き上げられる一方、管理職については60歳で役職の定年を迎え、県でも部局長は役職定年となる。対象となるのはほかに山川晴久地域連携・交通部スポーツ推進局長、下田二一同部南部地域振興局長、山本英樹防災対策部長、小倉康彦医療保健部長、中村徳久子ども・福祉部長、増田行信観光部長、山口武美企業庁長、三宅恒之監査委員事務局長(いずれも60歳)。各氏とも制度上は定年延長できるが、退職の見通し。
廣田副知事のポストはもともと国の官僚を迎えていたが、鈴木英敬前知事が農水商工部長などを務めた石垣英一氏を抜てきしたのをきっかけに、庁内から登用するのが慣例となった。役目は主に〝渉外担当”。旧出納長の流れをくむ内部管理中心のもう1枠の副知事とともに、住み分けが図られてきた。
庁内から登用の場合、廣田氏と同じ雇用経済部長を歴任し、民間にも人脈豊富な野呂危機管理統括監が適役か。管理系だが農林水産部長を務めた更屋総務部長もある。
いずれにしろ、渉外役の位置づけは前政権のスキーム。一見知事が局面転換を図り、新たに国などから登用する可能性もある。元幹部から登用される見込みは「今のところ適当な人材は見当たらない」(県OB)との声。
野呂氏後任の危機管理統括監は混戦模様。現部局長からの横滑りが濃厚で、人事畑の管理系、後田和也政策企画部長(58)の名が挙がる。ただ、庁内管理から権限が特化したことで、防災系から清水英彦地域連携・交通部長(59)もある。管理系では小見山幸弘雇用経済部長(59)の名も。山本防対部長が定年延長して就く見方も浮上する。一方、エキスパート人材として国から迎える可能性もあり。
総務部長も横滑り異動と見られる。財政畑の松浦元哉医療保健部理事(57)が就き、晴れて人事畑に明け渡したポストの奪還が図られるか。抵抗の強かった財政部門に服部浩副知事(64)が「一年の辛抱」と説き伏せたとの逸話も残る。
ただ、総務部は一見知事の代で官房機能が強化され、権限が集中した。そのため財政通より内部管理を重視するとの見方もあり、その場合は後田氏か。ほかに小見山氏、松下功一総務部デジタル推進局長(57)の名も挙がる。
医療保健部長には医療分野の経験が長い河合良之病院事業庁長(58)が横滑り異動するか。河合氏が就けば後任は河北智之同庁副庁長(58)が昇格か。河北氏が同部長の可能性もある。
防対部長は次長級からの昇格として川邉正樹同副部長(59)の名が挙がるほか、楠田泰司総務部副部長兼コンプライアンス統括監(56)の名も。管理系の楠田氏は防災通でも知られ、庁内では仕事の厳しさでも有名。能登半島地震では部外だったが経験者として川邉氏に次ぐ2番手で現地へ派遣された。
スポーツ推進局長は国体開催を目指し準備が必要な時期を迎えており、旧国体局で総務企画課長を務めた野口慎次県土整備部副部長(56)の名が挙がる。女性の積極登用を進める場合、関美幸同局次長(56)の昇格もあるか。
観光部長は大西毅尚雇用経済部副部長(58)、生川哲也観光部副部長(56)の名が。生川氏は英語が堪能な国際派。両氏は小見山氏異動の場合後任にも名が挙がる。
子ども・福祉部長は初任ポストだが児童虐待問題なども抱え難所。政策遂行だけでなく、児童相談所を含めた内部マネジメントの強化、危機管理対応が求められており、「子福のイメージはないが危機管理能力やスピード感のある楠田氏が適役ではないか」(次長級職員)との声。
南部地域振興局長も次長級からの昇格が見込まれ、中川実企業庁副庁長(58)、藤本典夫出納局副局長(58)か。ほかに後田政策部長が異動の場合、後任に松下デジタル局長の名が。その松下氏の後はIT通として知られる横山正吾地域連携・交通部副部長(56)の名も。
企業庁長は横滑りで竹内康雄環境生活部長(58)の名が。竹内氏後任に枡屋典子同部環境共生局長(57)が就くとの見方も浮上。監査委員事務局長は横滑り、昇格の両方あるか。
次長級からの昇格組は、コロナ対策で設けられた医療保健部理事職が廃止見込みで、9人程度が予想される。ほかに長崎禎和政策企画部副部長(57)が有力視。佐波斉農林水産部副部長(57)、田中誠徳環境生活部副部長(56)も予想されている。