伊勢新聞

2024年1月22日(火)

▼へき地の医療提供体制を強化するため、三重県鳥羽市が鏡浦地区を対象に医療MaaS(マース)診療車を活用した実証調査に乗り出した。診療車が地区に出向き、医療データを送信して診療所の医師と交信する仕組み。3月末まで調査し、本格導入を目指す

▼市によると、同地区の医療体制は心細い。浦村町本浦地区にある市立鏡浦診療所のほか、石鏡町と浦村町今浦地区にそれぞれ分室があるが、日替わり開設で午前と午後で医師が移動するため診療時間が短いという。能登半島地震で避難所での感染症や関連死が懸念される中、南海トラフ対象地として遅すぎる備えの気がしなくもない

▼離島を抱える同市はこれまでも心電図伝送をはじめ医療データの離島間通信システムの実験を試みてきたが、定着はどうか。震災地域で必要なのはまず生活関連物資の支援だが、続いて重要なのが情報提供サービスだ。現在の状況や支援体制の進行状態、国民の関心度―などが正確に伝わることで、被災者に勇気や気力が生まれる

▼能登半島地震の被災者の二次避難所への移動は16%で、福祉避難所の整備遅れや、石川県が確保した二次避難所の多くが県外や地元を遠く離れた南部であることなどの問題点が指摘されている。福祉避難所の未整備は、県でも本紙が伝えていた。東日本大震災からの県民の防災意識の薄れは令和3年度の35・3%から4、5年度50%強に拡大しているが、県の備えの方は大丈夫か

▼期待半分、心配半分のへき地医療強化に取り組む鳥羽市のオンライン診療実証調査である。