伊勢新聞

2024年1月21日(日)

▼津駅から近い住宅やマンションの建ち並ぶ一角の大型ショッピングセンターのテナント、著名なファーストフードチェーンストアが2月某日に閉店する告知を出した。大型SC自体の年度内閉鎖が昨年秋、取りざたされていた

▼津市もかつて売り出された高級住宅団地が次々高齢者の街と化し、商店が撤退して買い物難民問題が浮上している。無免許者や免許返納者も増え、公共交通機関からも取り残されて、知人が住宅を何とか売却して、この大型SC隣のマンションに引っ越したのは十数年前だ

▼知人ばかりではない。周辺にマンションが相次いで建設されたが、業者の入居者募集の宣伝文句の一つが、SCに隣接して生活に便利なことだった。肩すかしを食らった思いの人は多いのではないか

▼津市の前葉泰幸市長が広報紙のコラムで津駅周辺再編の機運の高まりとして道路ネットワークの進展を説いたのは大型SC閉鎖のうわさが広がった昨年10月だった。今年1月1日付では「完成目前の大型インフラ」。中勢バイパスに続き、港湾から橋梁の完成を誇っている

▼津市は昔、宝石類の所有率が日本一だと雑誌に紹介されたことがある。津競艇による収益が社会基盤の整備にまわされ、退職後の余生を過ごすには最適であることが原因とされていた。都市の基盤となる大型インフラの建設には「明快なビジョン」が必要だと、津市の前葉市長も広報紙のコラムで説く。住民が受益の機会を逸すことなく「時宜にかなった利便性を享受」できることが肝心としている。同感。